マイホームを購入する際に知っておきたい税金まとめ
更新日:2021-10-06
『マイホームを購入するとどのような税金がかかるのかな?』
『マイホームを購入したら何か申告しないといけないのかな?』
『マイホームを買うとしたらどのくらい貯えを用意しておけばいいんだろう?』
この記事はそのような方向けに書いています。
こんにちは、司法書士の樋口(@toruhiguchi)です。
私は東京都新宿区に本社を構える司法書士法人リーガル・ソリューションの代表司法書士で、不動産登記、不動産に関する訴訟手続きをメインに取り扱っています。
不動産(マイホーム)を購入する時にかかる税金
不動産(マイホーム)をいざ購入するとなると、購入する時にも、購入した後にも税金がかかってきます。
購入時にかかる可能性のある税金としては、次のものが挙げられます。
- 登録免許税
- 消費税
- 印紙税
- 固定資産税・都市計画税の日割り清算金
一つ一つ詳しく解説していきます。
登録免許税
登録免許税とは、登記や登録、免許、許可、認可などをする際に課税される税金です。
不動産を取得すると、実務上ほぼ100%、登記の手続きもすることになりますので、その際に登録免許税がかかります。
具体的に、どのような登記手続きが必要になり、どのくらい登録免許税がかかるのか、それぞれのケースごとに解説します。
まず、土地や中古の建物を購入する際には、所有権移転登記という登記手続きが必要になります。
この手続きは、売買契約に基づいて所有権が移転したという事実を法務局に報告し、登記の名義を売主から買主へと変更するものです。
物件を購入するにあたって住宅ローンなどの融資を受ける場合には、所有権移転登記と同時に、抵当権設定登記という手続きも行います。
抵当権とは、金融機関などのお金を貸す側が不動産を担保にとり、もし支払いが滞ったときは、競売(国が運営する不動産のオークションにかける)を申し立てることによって、金融機関が優先的に配当(貸したお金の返済)を受けることができる権利のことです。
抵当権を登記するための手続きを抵当権設定登記といい、金融機関は、この登記申請をすることを条件に、融資を行います。
また、建売住宅を購入する場合や、注文住宅が竣工した場合には、建物の所有権保存登記という登記手続きを行います。
所有権保存登記とは、土地家屋調査士による建物表題登記のあとに初めて行われる権利の登記のことです。
この手続きをすると、新築建物について所有権を持っているということが公示されます。
先ほどと同様、金融機関から融資を受ける場合には、抵当権設定登記も必要です。
注文住宅の竣工時には、所有権保存登記や抵当権設定登記以外に、次の登記手続きも必要になる場合があります。
- 土地の所有権登記名義人の住所変更登記
- 抵当権の債務者の住所変更登記
- 抵当権追加設定登記
これらの各種登記手続きは、通常は一つの司法書士事務所が、全てまとめて行います。
ただし、抵当権設定登記については、金融機関によっては、指定の司法書士事務所で手続きをしなければならない場合があります。
特に住宅ローンでネット銀行を利用する場合などには、司法書士が指定されていることが多いです。
登録免許税の計算方法は、どの登記手続きを行うかにより、下記の3つに分けられます。
①不動産の個数から算出する
②固定資産評価額に一定の税率を乗じる
③債権額に一定の税率を乗じる
①個数から算出するときは、例えば、不動産一個につき1,000円などと決められていますので、この金額に個数をかけて計算します。
この方法で計算するのは、登記名義人住所変更登記(下の表の㋔)、抵当権の債務者の住所変更登記(㋕)、抵当権追加設定登記(㋖)などです。
所有権移転登記(㋐、㋑)や所有権保存登記(㋒)の登録免許税は、②固定資産評価額に一定の税率を乗じて算出します。
例えば、固定資産評価額が1,000万円、税率が2.0%であった場合には、登録免許税は20万円となります。
③債権額に一定の税率を乗じて計算するのは、㋓抵当権設定登記などの手続きです。
例えば、債権額1,000万円、税率が0.4%の場合には、登録免許税が4万円となります。
下の表は、各手続きの登録免許税について、原則と例外をまとめたものです。
通常は司法書士が登記手続きを行いますので、買主自身が登録免許税を直接納める必要はありません。
登録免許税の納税方法としては、収入印紙を貼付して納める方法、Pay-easyを利用して電子納付をする方法などがあります。
買主が納付すべき税額を、決済日(引き渡し日)に司法書士が預かり、代わりに納税します。
不動産業者などからは、「登記費用」という名目で案内されることが多いかと思います。
登記費用は、登録免許税などの実費と司法書士の報酬(手数料)を合算した金額になっていますので、別途、税金分のお金を用意する必要はありません。
消費税
消費税とは、商品の販売やサービスの提供などに対して課税される税金です。
不動産には、原則として消費税はかかりません。
ただし、売主が消費税の課税事業者である場合には、不動産という『商品』を販売しているとみなされるため、建物に関して10%の消費税がかかります。
課税事業者とは、消費税を納税する義務がある法人や個人事業主のことをいい、不動産会社はこれにあたる可能性があります。
課税事業者である売主から、3,100万円(消費税込)の不動産を購入する場合の例を見てみましょう。
3,100万円の売買価格のうち、仮に土地代金を2,000万円とした場合、建物代金は1,100万円(うち消費税額100万円)になります。
不動産の売買契約書には、土地と建物の按分割合と、建物についての消費税相当額が記載されているはずですので、ここを見れば、土地価格や建物価格を知ることができます。
売買代金以外にも、例えば次のものには、消費税が課税されます。
- 仲介手数料
- 住宅ローン代行手数料
- 登記費用のうち司法書士の報酬(手数料)
- 融資事務手数料
一方、固定資産税・都市計画税の清算金には、原則として消費税はかかりません。
ただし、売主が消費税の課税事業者である場合には、清算金のうち建物相当分については、消費税が課されます。
例えば固定資産税・都市計画税の清算金を計算したところ、土地部分の金額が30,000円、建物部分の金額が30,000円であった場合、建物に対しては消費税が3,000円かかりますので、売主に対して支払う清算金は、全部で63,000円になります。
建物相当分について消費税がかかるのは、消費税法上、清算金が売買代金の一部とされているためです。
固定資産税・都市計画税の納税義務があるのは、その年の1月1日時点での所有者です。
売買により年の途中で所有者が変わったとしても、買主がその年の固定資産税・都市計画税を負担することはありません。
そのため、清算金の支払いについても、税金自体の清算をしている(=買主が税金の一部を納める)のではなく、税金相当額を売買代金の一部としてやり取りをしているものと判断されます。
不動産売買の際に、売買当事者の合意に基づき固定資産税・都市計画税の未経過分を買主が分担する場合の当該分担金は、地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するもの(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭)として課税の対象となります(基通10-1-6)。
なお、管理費や修繕積立金の清算金に関しては、立替金の清算ですので、消費税はかかりません。
印紙税
印紙税とは、一定の文書に対して課税される税金です。
不動産を購入する際には、いろいろな書類(文書)に署名押印することになりますが、その中には、印紙税を納めなければならないものもあります。
不動産購入時に印紙税が課される可能性がある書面は、次の3つです。
- 不動産売買契約書
- 金銭消費貸借契約書
- 建築請負契約書
それぞれの書面について、収入印紙貼付額を表にしました。
印紙税は、対象となる書面に法定された税額の収入印紙を貼付して消印をすることで、納付した扱いになります。
同じ書面を二部作るとそれぞれに印紙税がかかりますので、一部のみ作成し、原本を買主・金融機関・施主が、その写し(コピー)を売主・借主・請負人が保管することが一般的です。
不動産の売買契約書に関しては、不動産仲介営業マンが一時的に収入印紙代を立て替え、引き渡し時などに精算をするということがよく行われます。
金銭消費貸借契約書については、一般的には、金融機関側が収入印紙を手配し、融資実行日に、収入印紙相当額を借主の口座から引き落とします。
固定資産税・都市計画税の日割り清算金
固定資産税・都市計画税の日割り清算金とは、売主・買主間の不公平をなくすためにやり取りされるお金のことです。
通常は、残代金の支払いと同時に、固定資産税、都市計画税(マンションの場合には管理費、修繕積立金も含む)の清算金も支払います。
先ほど消費税のところでも触れましたが、この清算金は、厳密には税金そのものではありません。
ただ、実務的には、ほぼ間違いなく発生する出費ですので、こちらで解説します。
固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日の所有者に対して、1年分の税額が課税されます。
通常、売買が行われるのは年の途中ですので、その年については、1月1日から引渡日までは売主が、引渡日から12月31日までは買主が、所有者となります。
そうすると、引渡日以降については、売主は、所有者ではないにもかかわらず、税金だけを支払うことになってしまいます。
このままでは売主にとって不公平ですので、一般的には、売主が払いすぎた固定資産税・都市計画税を清算するということが行われています。
具体的には、引渡日から12月31日までの日割り税額を計算し、売買代金と一緒に支払いをします。
また、マンションの場合には、管理費・修繕積立金が毎月かかります。
ほとんどのマンションでは、当月分を先払いとしているため、固定資産税・都市計画税と同じように、売主が払いすぎた管理費・修繕積立金を残金決済日に清算します。
管理組合や管理会社によっては、管理費・修繕積立金を口座引き落としにしているところもあります。
この場合には、変更の処理手続きに時間がかかるため、引渡日の翌月以降の分も売主口座から引き落とされることが多いです。
そのため、実務的には、引き落とし口座が変更されるタイミングを管理会社に確認し、管理費・修繕積立金の1~2か月分+数日分を清算金とすることが多いです。
不動産を購入した後にかかる可能性のある税金
不動産の購入が無事に終わった後にも、負担しなければならない税金があります。
課税される可能性がある税金、確実に課税される税金としては、次のものが挙げられます。
- 不動産取得税
- 固定資産税、都市計画税
- 贈与税
一つ一つ詳しく見ていきます。
不動産取得税
不動産取得税とは、不動産の所有権を取得したという事実に対して、取得時に一度だけ課税される税金です。
取得した権利が登記されているかどうかは、課税の有無には影響しません。
不動産を取得する理由としては、相続、売買、贈与など様々なものがあります。
相続の場合には不動産取得税は課されませんが、売買や新築によって所有権を取得した場合には、原則として課税対象となります。
具体的にかかる金額としては、所有権移転登記の登録免許税額の最大1.5倍くらいと考えていただければ、予想外の出費におびえることはありません。
なお、一定の要件を満たした場合には、不動産取得税の軽減や免除を受けることができます。
すべての要件を覚えるのは大変ですので、特に重要なものだけを挙げます。
- 築年数が20年以内(木造住宅の場合)または25年以内(マンションの場合)
- 現況床面積が50㎡以上
マイホームを取得する場合、上の二つに該当すれば、不動産取得税は少ない、もしくはかからないと思っていても大きな間違いではないでしょう。
特に築年数が浅い場合(新築~10年以内など)には、基本的には課税されないと思っていただいて問題ありません。
下の図は、不動産取得税の税率をまとめたものです。
不動産取得税は都道府県税ですので、納付時期は自治体によって異なります。
一般的には、決済日後、概ね3か月から1年が経ったころに、不動産取得税のお知らせが届きます。
異議がない場合には、今度は納付書が届きますので、コンビニや金融機関、郵便局などで納付します。
固定資産税、都市計画税
固定資産税、都市計画税は、不動産の所有者に課税される税金で、保有している限りは毎年課されるものです。
固定資産税は、毎年1月1日の時点で、各自治体の固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に課税されます。
都市計画税が課税されるのは、都市計画で指定されている市街化区域内にある土地や建物を保有している人です。
税額の計算式を、下の表にまとめました。
固定資産税・都市計画税の税率は、それぞれの自治体が、ある程度自由に定めることができます
そのため、上の表とは異なる税率を定めたり、独自の軽減措置を設けたりしている市区町村もあります。
納付書が届く時期や納付期限も、全国一律で決まっているわけではありません。
一般的には、毎年4月から6月ごろに、各自治体から納税通知書と納付書が送られてきますので、これに従って納税をします。
※贈与税
贈与税とは、財産が無償で譲渡された場合に、これにより得た利益について、財産をもらった人に対して課税される税金です。
不動産の購入は有償ですので、原則として贈与税はかかりません。
ただし、次の場合には、例外的に贈与税が課税されることがあります。
- 不動産の代金を実際に支払った人と、登記名義人とが違う場合
- 支払った代金の割合と、共有持分割合とが違う場合
なお、上記に該当したとしても、軽減や控除を受けることができる場合もあります。
この点については、次の項で説明します。
不動産を購入すると軽減、還付される税金
不動産を購入すると要件を満たせば軽減を受けれたり、還付を受けることが出来る税金があります。
具体的には下記2つの税金です。
- 住民税・所得税
- 贈与税
住民税・所得税
住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合、要件を満たしたときは、一定期間、一定の割合が所得税から控除されます。
一般的に住宅ローン控除と呼ばれる制度です。
控除される金額は、原則として、その年の年末ローン残高の1%です。
所得税から控除しきれない場合には、住民税からも一定額の控除を受けることができます。
住民税から控除されるのは、所得税の課税総所得金額等の7%(最大で136,500円)です。
基本的な要件としては、下記のものが挙げられます。
- 取得後半年以内に入居し、控除を受ける年の年末まで引き続き居住している
- 登記床面積が50㎡以上
- 築年数が20年以内(木造住宅の場合)または25年以内(マンションの場合)
- ローンの返済期間が10年以上
これ以外にも、細かい条件や例外がいろいろとありますが、一般的なマイホームの取得であれば、控除の対象となることが多いかと思います。
要件を満たした場合には、原則として10年間(一定の場合には13年間)にわたり、控除を受けることができます。
控除されるべき金額は、購入した年の翌年に確定申告を行うことにより還付されます。
なお、給与所得者であれば、2年目以降は、年末調整の際に控除を受けることができます。
贈与税
先ほども記載しましたが、不動産の購入に関しては、原則として贈与税はかかりません。
例外として
①不動産の代金を実際に支払った人と登記名義人とが違う
②支払った代金の割合と共有持分割合とが違う
上記の場合には贈与税が課される可能性があります。
売買により不動産の名義を取得するためには、それに見合う対価(代金)を支払う必要があります。
しかし、上記①②の場合には、登記の名義を取得した人は、自分では代金を支払っていません。
この場合、税法上、不動産の名義を無償で取得した(=代金を払った人から、登記の名義を取得した人に対して、贈与があった)と評価されるため、贈与税が課されます。
ただし、①②にあたるときでも、次のような場合には、贈与税がかからなかったり、税額を減らしたりすることができることがあります。
- 贈与税の基礎控除(年間110万円)の範囲内の場合
- 代金を支払った人が、名義を取得した人と結婚して20年以上になる場合
- 代金を支払った人が、名義を取得した人の父母、祖父母などの直系尊属にあたる場合
特に基礎控除として誰でも年間110万円までは贈与税はかかりませんので、共有持分の割合の誤りが110万円の範囲内であれば贈与税はかかりません。
そのため、出資した割合と共有持分が多少異なっていても特段問題はありませんが、110万円を超える場合には、他の贈与税の特例措置の要件が満たされている等の事情がない限り、贈与税が課税される可能性があります。
贈与税が課税される場合には、取得した年の翌年の確定申告のシーズンに、贈与税の申告をする必要があります。
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