抵当権追加設定登記とは?必要書類と費用もあわせて解説
更新日:2021-09-02
『銀行から新築建物を追加担保として差し入れてほしいといわれている』
『建物竣工時にする抵当権追加設定登記って何?』
『抵当権追加設定登記にはどの位費用がかかるのかな?』
この記事はそのような方向けに書いています。
こんにちは、司法書士の樋口(@toruhiguchi)です。
私は東京都新宿区に本社を構える司法書士法人リーガル・ソリューションの代表司法書士で、不動産登記、不動産に関する訴訟手続きをメインに取り扱っています。
抵当権追加設定登記とは?
抵当権追加設定登記とは、すでに設定されている抵当権の担保として、他の不動産も担保に加える手続きのことを言います。
専門的な内容ですので、抵当権追加設定登記の前提となる知識から解説します。
一つの債権の担保として、複数の物件に対して抵当権を設定することを、共同抵当といいます。
共同抵当になる場合としては、次の2つのパターンがあります。
①当初から複数の物件に対して抵当権が設定される場合
②後から担保物件が追加される場合
②で、建物を担保物件に加えるときにされるのが、抵当権追加設定の登記です。
抵当権の設定は物件ごとに行いますので、土地の上に建物が建ったとしても、当然に建物が担保に追加されるわけではありません。
建物も担保に入れたい場合には、抵当権追加設定登記の手続きをする必要があります。
個人の方がこの手続きをするのは、②のように、注文住宅を建てる場合がほとんどかと思います。
登記が完了するとどうなる?
(事例)
Aは、令和2年10月21日、マイホームを建てるための土地を購入した。
その際にローンを利用して融資を受けたため、土地に対してB信用保証会社の抵当権が設定された。
その後、建物が完成し、令和3年5月31日に引渡しが行われた。
① 令和2年10月21日、土地についての抵当権設定登記手続きが行われます。
抵当権の設定は、登記簿の乙区という部分に記録されます。
(土地の登記記録)
② 令和3年5月31日、建物についての抵当権追加設定登記手続きがされます。
これにより、建物の登記記録の乙区に、抵当権に関する記録がされます。
また、追加設定により、土地と建物が共同抵当となりましたので、共同担保目録というものも作成されます。
共同担保目録には、共同抵当の関係にある物件の一覧が記載されます。
共同担保目録は登記情報の一部で、謄本のいちばん最後に記載されています。
ただし、共同担保目録入りの謄本を取るためには、申請用紙の共同担保目録の欄にチェックを入れ、必要事項を記入しなければいけません。
(建物の登記記録)
③ 土地に抵当権が設定されたとき、担保は一つだけでしたので、共同担保目録は作成されていませんでした。
建物への追加設定がされたことにより共同抵当となったので、その旨が記録が追加されます。
また、②の登記の完了後に土地の謄本を請求すると、共同担保目録が反映された謄本を取得することができます。
(土地の登記記録)
抵当権設定登記について詳しく知りたい方は『抵当権設定登記って何?費用のシミュレーションと流れを解説』をご覧ください。
抵当権追加設定の費用
抵当権追加設定にかかる費用は、大きく分けて、国に納める登録免許税と、司法書士の報酬とから成り立っています。
抵当権設定登記手続きと抵当権追加設定登記手続きとで、司法書士の報酬はあまり変わりません。
しかし、登録免許税については、通常は前者のほうが高くなります。
その結果、登記費用全体に占める報酬の割合は、抵当権追加設定登記の場合のほうが、相対的に高くなります。
登録免許税
抵当権設定登記の登録免許税の税率は、原則として設定金額の0.4%です。
担保物件の中に建物がある場合には、税率が0.1%になることもありますが、事例のように、土地のみに対して設定するときは、原則どおり0.4%です。
一方、抵当権追加設定登記の登録免許税は、次の条件を満たした場合には、追加担保1件につき1,500円となります。
- 共同抵当についての抵当権設定登記手続きであること
- 既に抵当権が設定されている物件があること
- 登記の申請時に、既に抵当権が設定されている物件の登記事項証明書などを添付すること
司法書士の報酬(手数料)
登録免許税を安くすることができるとはいえ、抵当権追加設定登記の手続きの内容は、通常の抵当権設定登記の場合とほぼ同じです。
そのため、司法書士の報酬も、抵当権設定登記のときと同じような価格にしている事務所も少なくありません。
なお、上に挙げた司法書士の報酬相場は、申請する登記1件あたりの金額です。
ペアローンの場合は、抵当権追加設定登記を2件申請することになるため、報酬も増えることが一般的です。
必要書類(添付書類)
抵当権追加設定登記と抵当権設定登記とでは、手続きに必要な書類も、ほぼ同じです。
ただし、抵当権追加設定登記に特有の書類もあります。
登記原因証明情報
登記原因証明情報とは、なぜ今回の登記を申請するのか、その理由となる事実や法律行為を記載した書類です。
抵当権追加設定登記の場合には、次の書類が登記原因証明情報となります。
どちらの場合も、金融機関が作成することが多いです。
・抵当権追加設定契約書
登記申請の際には、契約書の原本を法務局に提出する必要があります。登記が完了すると、原本を返してもらうことができます。
・「登記原因証明情報」というタイトルの書類
抵当権追加設定契約書のうち、登記に必要な部分を落とし込んだ書類です。
返却してもらえるとはいえ、大事な契約書を提出することに抵抗を感じる金融機関も少なくありません。
そのため、法務局提出用に別途作成される「登記原因証明情報」もよく利用されています。
印鑑証明書
印鑑証明書は、登記申請日前3か月以内のものが必要です。
抵当権追加設定契約書と違い、登記が完了しても、返してもらうことはできません。
なお、次のようなケースでは、抵当権設定登記や抵当権追加設定登記を、2件以上申請することになります。
- 追加設定のほかに、新規の抵当権設定もある場合
- ペアローンの場合
この場合でも、各申請に共通する添付書類は、併せて1通で足りるとされています。
そのため、印鑑証明書も1通用意すれば、通常は問題ありません。
登記識別情報(登記済権利証)
所有者の、建物分の登記識別情報(登記済証)が必要です。
ただし、注文住宅の場合には、まず所有権保存登記を申請し、続けて抵当権追加設定登記の申請を行うことが通常です。
抵当権追加設定登記の申請時には、その直前の所有権保存登記の完了後に発行される登記識別情報が必要です。
そうすると、登記識別情報が手元にないことになりますが、便宜的に、提供したものとみなされることになっています。
ただし、追加設定のほかに、土地と建物に対して新規の抵当権設定も行う場合には、土地分の登記識別情報が必要です。
実印
抵当権を設定する際には、設定者の実印が必要です。
司法書士に依頼する場合には委任状に、自分で手続きをする場合には申請書の設定者の欄に、それぞれ実印を押します。
登記証明書
既に抵当権が設定されている物件の登記事項証明書を添付します。
これにより、登録免許税を追加担保1件につき1,500円とすることができます。
ただし、既に抵当権が設定されている物件を管轄する法務局と、今回抵当権を設定する物件を管轄する法務局とが同じ場合には、登記事項証明書の添付を省略することができます。
注文住宅であれば、土地と建物は同じ法務局の管轄内にありますので、省略が可能です。
省略したい場合には、申請書の添付情報欄に、「登記証明書(添付省略)」と記載します。
登記申請書記載例
①登記の目的
追加設定の場合でも、目的は「抵当権設定」となります。
②原因、③債権額、④損害金
土地に設定された抵当権と同じように記載します。
ただし、設定日に関しては、抵当権追加設定をした日付となります。
⑤債務者
現在の印鑑証明書上の住所を記載します。
⑥抵当権者
抵当権者の住所、名称、代表者、会社法人等番号を記載します。
抵当権者の登記事項証明書(登記申請前3か月以内のもの)を添付した場合には、会社法人等番号の記載は不要です。
⑦設定者
設定者(建物の所有者)の住所と氏名を、印鑑証明書のとおりに記載し、横に実印を押します。
⑧添付情報
個々の添付情報の内容については、後で詳しく説明します。
⑨登記識別情報を提供することができない理由
所有権保存登記と同時に抵当権追加設定登記手続きを行う場合には、何もチェックを入れないままで問題ありません。
⑩登記識別情報の通知の希望の有無
この欄にチェックを入れてしまうと、登記の完了後に登記識別情報が発行されません。
登記識別情報は、いわゆる権利証にあたる大事なものですので、必ず発行してもらうようにしましょう。
⑪申請日、管轄法務局
抵当権追加設定登記の場合、通常は設定日が申請日になります。
⑫登録免許税
減税の根拠条文として、「登録免許税法第13条第2項による」と記載します。
⑬不動産の表示
今回追加で担保に入れる物件の表示を、登記簿のとおりに記載します。
⑭前登記の表示
先に抵当権を設定した物件の表示と、順位番号を記載します。
既に共同担保目録が作成されている場合には、目録の番号でも問題ありません。
自分で手続き出来る?
先ほど費用の項目でも触れましたが、抵当権追加設定登記手続きでは、司法書士の報酬が費用の多くを占めることが多いです。
そのため、自分で手続きをして、費用を安く抑えたいと考える方もいらっしゃるかと思います。
しかし、実務上、ご自身で手続きをすることができるケースは、あまり多くありません。
登記手続きにミスがあった場合に無担保となりかねないなど、所有者自身に手続きを任せることは、金融機関にとってリスクが大きいためです。
マイホームの登記手続きを自分で出来るか詳しく知りたい方は『マイホーム購入の登記手続きを司法書士に依頼せず自分で出来るか?』をご覧ください。
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