新築戸建ての登記費用とは?報酬の相場と登記の内訳もあわせて解説
更新日:2021-7-23
ハウスメーカーや建売業者、注文住宅用の土地購入時の不動産仲介業者から、新築戸建ての登記費用について説明を受けたかと思います。
初めてのマイホーム購入で各種費用が妥当なのか、正しいのかどうかわからない方も多いのではないでしょうか?
『新築戸建ての登記費用ってどのくらいかかるのかな?』
『新築戸建ての登記費用の相場ってどのくらいなんだろう?』
本稿ではこのような疑問を、現役司法書士が詳しく解説します。
新築戸建ての登記費用とは
戸建てを新築したときには、大きく分けて2種類の登記をする必要があります。
一つ目は建物表題登記というもので、この登記が完了すると、下の図の赤枠で囲ってある「表題部」の部分が登記簿に記録されます。
表題部には、建物がある場所や構造、床面積など、建物の物理的な状態が載っています。
建物表題登記の手続きは、『土地家屋調査士(とちかおくちょうさし)』という専門家が行います。
二つ目は権利に関する登記で、上の図でいうと青枠で囲ってある「権利部(甲区)」と権利部「(乙区)」の部分にあたります。
建物に関する権利関係が載っており、甲区には所有権に関するものが、乙区には所有権以外の権利(抵当権など)に関するものが記録されます。
権利に関する登記の手続きは、『司法書士(しほうしょし)』という専門家が行います。
権利に関する登記の際には、国に対して登録免許税という税金を納めます。
建物表題登記については、登録免許税はかかりません。
権利の登記については登録免許税が課されますので、手続きを行う司法書士が事前に依頼者から預かり、代わりに納付します。
登録免許税は、申請する登記ごとに課されます。
どのような登記手続きが必要になるかは、取得したのが『注文住宅』なのか『建売住宅』なのかによって、大きく変わってきます。
新築の際に登記が必要な理由
土地家屋調査士による建物表題登記については、一定の期間内に登記を申請しなければなりません。
これに対し、権利に関する登記には、法律上申請義務はありません。
しかし、権利は目に見えませんので、自分が物件の所有者であることを第三者に対して主張するためには、登記を備えなければなりません。
そのため、一般的には司法書士による権利の登記手続きも行います。
なお、住宅ローンを利用する場合には、登記を備えることが融資の条件になっていますので、必ず登記手続きを行うことになります。
注文住宅で必要な登記
注文住宅とは、ハウスメーカーや工務店に注文し、自分の希望を反映して建ててもらう家のことです。
もともと自分で所有している土地(もしくは親族等が所有している土地)の上に建ててもらう場合と、建築出来る土地を探して購入し、その後建ててもらう場合の2パターンがあります。
土地を所有していない場合
下の図は、建築用の土地を購入する場合に必要な登記の種類、報酬の相場、登録免許税をまとめたものです。
既に土地を所有されている方は、この手続きや費用は不要ですので、建物竣工後以降の説明をご覧ください。
土地の所有権移転登記
土地の残金決済が終わったら、所有権移転登記を申請し、売主から買主へと登記の名義を変更します。
登録免許税は、土地の固定資産評価額の1.5%です。
例えば購入する土地の固定資産評価額が1,000万円であれば、登録免許税は15万円となります。
司法書士の報酬相場は、30,000円~80,000円ほどです。
不動産購入時の所有権移転登記の手続きについて詳しく知りたい方は『不動産購入時の所有権移転登記って何?具体的な費用と報酬の相場について解説』をご覧ください。
抵当権設定登記
土地の購入時にローンを利用するときは、抵当権設定登記の手続きも行います。
融資を受けずに自己資金で取得する場合には、所有権移転登記手続きのみとなります。
抵当権の設定の仕方は、ローンの内容や金融機関により異なってきます。
以下、代表的なケースを3つ挙げます。
【ア 土地残代金決済時:抵当権設定 建物引渡時:抵当権追加設定+抵当権設定】
① 土地購入時に、土地に対し抵当権を設定します。抵当権の設定金額は、土地分の融資額と、建物分の融資額の一部の合計額となることが多いです。
② 建物完成時に、①で設定した抵当権を建物に対しても設定します。(建物も担保にとる)さらに、建物分の融資額の残額について、土地と建物に対し抵当権を設定します。
【イ 土地残代金決済時:抵当権設定 建物引渡時:抵当権追加設定】
① 土地購入時に、土地に対し抵当権を設定します。抵当権の設定金額は、土地分の融資額と建物分の融資額の合計額です。
② 建物完成時に、①で設定した抵当権を建物に対しても設定します。(建物も担保にとる)
【ウ 土地残代金決済時:登記なし 建物引渡時:抵当権設定】
① 土地購入時に、融資は行いますが抵当権設定登記は行われません。 (いわゆるつなぎ融資)
② 建物完成時に、土地と建物に対し、抵当権を設定します。抵当権の設定金額は、土地分の融資額と建物分の融資額の合計額です。
土地の購入時に抵当権を設定する場合の登録免許税は、抵当権を設定する金額(融資金額)の0.4%です。
例えば土地購入時に2,000万円の抵当権を設定する場合には、登録免許税は8万円となります。
司法書士の報酬相場は、30,000円~70,000円ほどです。
抵当権設定登記について詳しく知りたい方は『抵当権設定登記って何?費用のシミュレーションと流れを解説』をご覧ください。
土地を所有している場合
土地を当初から所有している場合、もしくは土地の残代金決済を終えている場合には、基本的には建物竣工まで登記手続きをする必要はありません。
ただし、土地残金決済後、中間金の支払いのために融資を受ける場合に、借入先金融機関によっては『抵当権設定仮登記』をする場合があります。
建物竣工後
無事建物が完成したら、土地家屋調査士による建物表題登記と司法書士による権利の登記手続きを行います。
土地の決済後、半年から1年くらい経ってからの手続きになることが多いかと思います。
建物が完成する1か月ほど前から、登記手続の準備を始めます。
次の図では、必要となる可能性のある登記をまとめてあります。
登記の種類を6つ挙げていますが、ケースによっては不要な場合もありますので、ご自身に必要な箇所をご参照ください。
建物表題登記(土地家屋調査士が代行)
建物が完成すると、まずは土地家屋調査士による建物表題登記手続きが行われます。
登録免許税はかかりません。
土地家屋調査士の報酬相場は、10万円前後です。
土地の登記名義人住所変更登記
土地の登記簿には、所有権移転登記を申請した当時の住所が記録されています。
建物が完成し、新居の住所に住民票を異動しても、登記上の住所は自動的には変更されません。
登記上の住所を変更する手続きのことを『登記名義人住所変更登記』といいます。
住民票を異動後、建物竣工時に土地に対して新規で抵当権を設定する場合には、前提としてこの登記名義人住所変更登記が必要です。
そのため、建物竣工時に土地に対して抵当権を設定しない場合には、住民票を新居に異動していたとしても住所変更登記をする必要はありませんが、住所変更登記の手続きをすることが融資の条件となっている金融機関がほとんどです。
建物竣工時の登記手続きまでに、住民票を新居に異動しない場合には、この登記名義人住所変更登記は不要です。
新住所か現住所で登記するか悩んでいる方は『旧住所!?新住所!?マイホーム購入の際の登記の住所について徹底解説!』をご覧ください。
登記名義人住所変更登記にかかる登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
司法書士の報酬相場は、8,000円~20,000円ほどです。
登記名義人住所変更登記について詳しく知りたい方は『登記名義人住所変更登記とは?不動産登記簿の住所変更について解説』をご覧ください。
抵当権の債務者の住所変更登記(抵当権変更登記)
土地の購入時に土地に対し抵当権を設定した場合には、『抵当権の債務者の住所変更登記』が必要になる可能性があります。
抵当権設定登記の際には、債務者(土地を購入するためお金を借りた人)の住所も記録されます。
通常は、土地の購入者がローンを組んで抵当権を設定しますので、抵当権の登記記録には、所有権移転登記時の住所が記録されています。
先ほどの登記名義人の住所変更登記の場合と同じく、抵当権の債務者の住所を新住所に変えるためには、抵当権の債務者の住所変更登記を申請します。
これを『抵当権変更登記』といいます。
ただし、先ほどの場合と違い、抵当権の債務者の住所変更については、登記手続きを不要とする金融機関が多いです。
変更する場合、登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
司法書士の報酬相場は、10,000円~30,000円 ほどです。
抵当権の債務者の住所変更登記について詳しく知りたい方は『抵当権の債務者の住所変更登記とは?必要書類や費用についても解説』をご覧ください。
所有権保存登記
権利に関する登記のうち、建物表題登記後に初めて建物の登記記録に申請する登記を『所有権保存登記』といいます。
所有権保存登記では、新築物件の所有者の住所や氏名が記録されます。
所有権保存登記の登録免許税は、原則として、建物の固定資産評価額の0.4%です。
ただし、居住用の軽減措置を受けられる場合には、建物の固定資産評価額の0.15%になります。
新築戸建ての購入の場合には、基本的にこの居住用の軽減の要件を満たしていることがほとんどです。
なお、軽減措置の要件を満たし、さらに認定住宅にも該当するときは、税率は建物の固定資産評価額の0.1%になります。
司法書士の報酬相場は、25,000円~50,000円 ほどです。
※居住用の軽減措置について
新築物件を取得した際、一定の要件を満たす場合には、所有権保存登記や抵当権設定登記について、登録免許税の軽減を受けることができます。
軽減の主な要件は、以下の通りです。
①マイホームついての借入れ・抵当権設定であること
登記簿上の建物の種類が、「居宅」となっていることが必要です。
住むための建物であっても、登記簿上の表示が「共同住宅」「事務所」などとなっている場合には、要件を満たしません。
また、ローンの借主が抵当権設定者でない場合には、軽減を受けることができません。
②建物の床面積50㎡以上であること
登記簿上で50㎡以上あることが必要です。
③所有権保存登記が、新築または取得後1年以内になされること
※認定住宅について
認定住宅には、長期優良住宅と認定低炭素住宅とがあります。
簡単に言うと、長期優良住宅は、バリアフリー性、耐震性、省エネルギー性などに優れ、安全に長く住むことができる家です。
認定低炭素住宅は、二酸化炭素の排出を抑えるための対策がされた、環境に優しい家です。
認定住宅についての軽減措置を受けるためには、一定の性能を満たすことの証明書などが必要ですが、通常はハウスメーカーや工務店が取得します。
所有権保存登記について詳しく知りたい方は『所有権保存登記とは?登記費用や自分で手続き出来るか詳しく解説』をご覧ください。
抵当権追加設定登記
土地の購入時には建物は存在しませんので、土地購入時の抵当権は、土地のみが担保になっています。
この抵当権の担保として建物を追加する登記(建物に対しても既存の抵当権を設定する登記)が、抵当権追加設定登記です。
つなぎ融資の場合等、土地に抵当権を設定しなかった場合には、抵当権追加設定登記は不要です。
登録免許税は、追加する不動産1個につき1,500円です。
司法書士の報酬相場は、30,000円~70,000円 ほどです。
抵当権追加設定登記について詳しく知りたい方は『抵当権追加設定登記とは?必要書類と費用もあわせて解説』をご覧ください。
抵当権設定登記
建物完成時に新たな融資を受けて抵当権を設定する場合には、土地と建物に対して抵当権設定登記手続きを行います。
登録免許税は、抵当権設定金額(新規融資額)の0.4%です。
ただし、居住用の軽減措置を受けられる場合には、0.1%になります。
司法書士の報酬相場は、30,000円~70,000円 ほどです。
建売住宅で必要な登記
建売住宅とは、不動産会社などの売主から、土地と建物をセットで購入する場合の新築住宅のことです。
注文住宅で土地から購入する場合には、土地購入時と建物完成時、少なくとも2回登記手続きが必要です。
これに対し、建売住宅の場合には、登記手続きは1回で済みます。
建売住宅の場合に必要な登記は、以下の通りです。
登記の種類自体は注文住宅の場合と大きな違いはありませんが、手続きが1回で済む分、項目数は少なくなり、費用も安くなることが一般的です。
建物表題登記(土地家屋調査士が代行)
建物が完成すると、注文住宅の場合と同様に、土地家屋調査士による建物表題登記手続きが行われます。
土地の所有権移転登記
土地については、売主である不動産業者から買主へ、所有権移転登記手続きを行います。
手続きの流れや費用は、注文住宅の場合の土地購入時と同様です。
所有権保存登記
所有権保存登記についても、注文住宅と同様です。
抵当権設定登記
住宅ローンを利用する場合には、土地と建物に対して抵当権を設定しますので、その登記手続きを行います。
そのため、自己資金で建売住宅を購入する場合には不要です。
登録免許税は、原則は抵当権設定金額の0.4%、居住用の軽減措置を受けられる場合には抵当権設定金額の0.1%です。
司法書士の報酬相場は注文住宅と同様、30,000円~70,000円 ほどです。
登記費用の相場
登記費用は、登録免許税などの実費部分と、司法書士の報酬とに分けられます。
土地の所有権移転登記や建物の所有権保存登記の登録免許税は、土地や建物の固定資産評価額に一定の税率をかけて計算します。
そのため、固定資産評価額がわからないと、実費の大部分を占める登録免許税を算出することができません。
登記費用の総額に大きな差が出るとしたら、土地家屋調査士の報酬と司法書士の報酬部分になります。
司法書士の報酬については、かつては一律に報酬基準が定められていましたが、現在では撤廃されています。
各司法書士事務所が自由に報酬を決めることができるようになったため、報酬部分については、事務所によりかなり差が出ます。
一般的に不動産の固定資産評価額や売買価格、不動産の個数や抵当権の融資金額によって報酬を変動させている事務所が大多数です。
またエリアによっても多少ばらつきがあり、一般的には都心の司法書士事務所の方が報酬が高い傾向があります。
登記費用を安く抑える方法
不動産を購入するときには、売買代金、工事代金、ローン、登記費用、保険、引越し代、新居の家具など、多額のお金がかかります。
節約できるところは安く抑え、少しでも出費を減らしたいと思われる方も多いでしょう。
ここからは、登記費用を安く抑えられる可能性がある方法を2つ、挙げてみます。
自分で土地家屋調査士、司法書士を手配する
一つ目の方法は、自分で土地家屋調査士や司法書士を手配することです。
知り合いや友人に土地家屋調査士や司法書士がいる場合には、その人に頼んでみるのもいいかもしれません。
また、最近は多くの司法書士事務所がホームページを開設しており、その中に報酬が記載されていることも少なくありません。
ご自身でインターネットで検索して司法書士事務所を見つけ、問い合わせしてみるのも一つの手段です。
自分で登記手続きする
二つ目の方法は、自分で登記手続きをすることです。
自分で手続きをすれば、土地家屋調査士、司法書士の報酬部分を丸々削減することができますが、これは可能なのでしょうか?
まず、建物表題登記については、自分で手続きを行うことも可能です。
ただし、土地家屋調査士が申請する場合と比べ、法務局の審査が厳格になったり、審査に時間がかかったりするようです。
次に、権利に関する登記についてですが、こちらも法律上は自分で手続きを行うことが可能です。
ただし、ローンを利用する場合には、実務上、登記の専門家である司法書士が手続きを行うことがほとんどです。
登記手続きにミスがあった場合に無担保となるなど、金融機関にとってリスクが大きいためです。
なお、建物表題登記にしても権利に関する登記にしても、自分で登記手続きをするということについて、難色を示す関係者も少なくありません。
多くの建売業者やハウスメーカーでは、いつも依頼している土地家屋調査士や司法書士がおり、その事務所に依頼するほうが手続きがスムーズにできるためです。
建物工事請負契約書や売買契約書に、土地家屋調査士や司法書士を指定する条項が入っていることも少なくありません。
このような条項がある場合には、自分で専門家を手配したり、自分で登記申請をしたりすることは難しいと思われます。
そのため建売業者やハウスメーカーが問題なく、契約書に土地家屋調査士事務所や司法書士事務所の指定の条項がない場合には、自分で手配することは問題なく可能です。
自分で登記手続きを出来るか詳しく知りたい方は『マイホーム購入の登記手続きを司法書士に依頼せず自分で出来るか?』をご覧ください。
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