登記名義人住所変更登記とは?不動産登記簿の住所変更について解説

登記費用

更新日:2021-09-07
登記簿謄本の住所って変更しないといけないの?
登記名義人住所変更登記って何?
住所が変わったから自分で登記簿の住所変更手続きをしたい』  

この記事はそのような方向けに書いています。 

こんにちは、司法書士の樋口@toruhiguchiです。
私は東京都新宿区に本社を構える司法書士法人リーガル・ソリューションの代表司法書士で、不動産登記、不動産に関する訴訟手続きをメインに取り扱っています。 

司法書士 樋口亨
司法書士 樋口亨
今回は不動産の登記簿謄本上の、所有者の住所変更手続きについて解説しています。 

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登記名義人住所変更登記とは?

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不動産について、所有権や抵当権などの権利を取得し、権利者として登記簿に記録された人のことを、登記名義人といいます。

登記名義人は、その住所と氏名(法人の場合は本店と商号)が、登記簿に記録されます。 

引越しなどにより住所が変わった場合でも、登記簿上の登記名義人の住所は、自動的には変更されません。

変更を反映させるためには、住所変更の登記を申請する必要があります。 

この住所を変更する登記手続きのことを『所有権登記名義人住所変更登記』と言います。

なお司法書士業界では、省略して『名変』と略されることが多いです。

必要なケース

住所が変わる理由として、よくあるものとしては下記図表の通りです。

変更の理由の図表

※地番の変更を伴わない行政区画などの変更があった場合、登記名義人の住所は当然に変更されているものとみなされるため、住所変更登記の申請は不要です。
ただし、「みなされる」だけで、登記記録が書き換えられるわけではありませんので、登記簿上の住所は「A市B町1番地の2」のままです。これを「A市C町1番地の2」に変更したい場合には、住所変更登記の申請が必要です。 

本稿執筆時点では、住所変更登記の申請は義務とはされていません
そのため、上の表で住所変更登記が必要とされる場合でも、実際に登記を申請するかどうかは、登記名義人の判断に委ねられています。 

ただし、売却による所有権移転登記や、ローンの借入れに伴う抵当権設定登記などを申請する際、登記名義人の住所が変わっている場合には、これらの登記の前提として、住所変更登記の手続きが必須となります。 

また、近時の法改正により、令和8年までに、住所変更登記の申請が義務化されることとなりました。 

主な改正点は、次の2点です。 

①所有権の登記名義人は、氏名・住所の変更があったときは、変更日から2年以内にその変更登記をしなければならない。
この規定は、改正法の施行前に変更があり、その登記を申請していない人にも適用されます。この場合には、改正法施行日から2年以内に、変更登記を申請しなければなりません。正当な理由がないのに申請を怠った場合には、5万円以下の過料が課されます。

②一定の場合には、登記官が職権で住所等の変更登記を行うことができる。 

現時点では、次のような運用が予定されています。(法務省ホームページより抜粋) 

(自然人の場合) 

㋐ 登記申請の際には、氏名・住所のほか、生年月日等の「検索用情報」の申出を行う。 

㋑ 登記官が、検索用情報等を用いて住民基本台帳ネットワークシステムに対して照会し、所有権の登記名義人の氏名・住所等の異動情報を取得する。 

㋒ 登記官が、取得した情報に基づき、登記名義人に住所等の変更の登記をすることについて確認をとった上で、変更の登記をする。 

住所変更登記にかかる費用

所有権登記名義人住所変更登記手続きにかかる費用としましては、下記図表の通りです。

登録免許税の図表

非課税とするためには、住居表示実施証明書や町名(地番)変更証明書など市町村役場で発行される証明書が必要です。 

自分で手続き出来る?

住所変更登記は、司法書士に依頼せず、ご自身で手続きを行うことも可能です。 

ただし、登記の審査には、通常2週間程度かかります。

例えば、物件の売却を予定している場合に、残金決済の直前に住所変更登記のみを申請してしまうと、決済日が延期になってしまうこともありますので、注意が必要です。

登記中の例

注文住宅の竣工時に新居に住民票を移した場合には、土地の登記簿の住所変更登記が必要です。

抵当権の追加設定登記等と共に司法書士へ依頼することになると思いますが、上記のことも踏まえ自分で手続きするか検討しましょう。

マイホーム購入の登記を自分で手続き出来るか詳しく知りたい方は『マイホーム購入の登記手続きを司法書士に依頼せず自分で出来るか?』をご覧ください。

自分で手続きする場合の流れ

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ご自身で住所変更登記の手続をされる場合の流れは、次のとおりです。 

  1. 必要な添付書類を準備する 
  2. 申請書を作る 
  3. 法務局に提出する 
  4. 完了後の書類を受け取る  

以下、それぞれについて説明していきます。 

登記申請書の作成

(事例) 

Aの登記簿上の住所は、B県C市D町一丁目2番3号になっている。
その後、Aは、平成30年8月27日にB県E市F町四丁目5番6号に転居し、さらに令和3年6月28日、B県G市H町七丁目8番9号に転居した。  

この場合の登記申請書は、次のようになります。 

登記申請書例

①登記の目的

住所が変わった理由が、転居、住居表示の実施、行政区画の変更のいずれであっても、目的はすべて「所有権登記名義人住所変更」となります。 

②原因

変更の届出をした日ではなく、実際に住所が変わった日が原因日付になります。
事例のように、住所が複数回変わっているときは、最後に変更があった日を記載します。 

③変更後の事項

現在の住所(B県G市H町七丁目8番9号)のみを記載すればよく、途中の住所(B県E市F町四丁目5番6号)の記載は不要です。 

④申請人

申請者の現在の住所、氏名、電話番号を記載し、印鑑(認印でもよい)を押します。 

⑤添付情報

「住民票」「戸籍の附票」といった具体的な書類名ではなく、「登記原因証明情報」と記載します。 

⑥申請日、管轄法務局

登記の申請日は、実際に申請書を提出した日です。郵送で送る場合は、空欄のままでも問題ありません。 

⑦登録免許税

今回は転居による変更ですので、原則どおり(物件の個数)×(1,000円)が登録免許税となります。 

非課税になる場合には、その根拠条文の記載が必要です。
例えば、住居表示の実施による場合は、「登録免許税法第5条第4号」が根拠条文となります。 

⑧不動産の表示

物件の表示を、登記簿のとおりに記載します。 

添付書類(必要書類)

住所変更登記の添付書類は、基本的には、次の項で説明する「登記原因証明情報」のみです。
住所が変わったのが1回だけであれば、住民票を用意すれば足ります。

ただし何回も住所が変わっている場合や住所変更の履歴がつながらない場合などには、他の書類必要になってきます。 

登記原因証明情報として住民票

登記原因証明情報とは、なぜ今回の登記を申請するのか、その理由となる事実や法律行為が記載された書類です。 

住所変更登記の場合には、例えば、次のような書類が登記原因証明情報となります。 

  • 住民票
  • 住民票の除票
  • 戸籍の附票
  • 戸籍の附票の除票 
  • 住居表示実施証明書 
  • 町名地番変更証明書

ここで、用意する書類は、登記簿上の住所から現在の住所まで、変更の履歴がつながるものでなければなりません。 

事例の場合、Aは、C市→E市→G市と転居をしています。
申請書にはE市のことを記載する必要はありませんでしたが、添付書類としては、C市→E市→G市と住所を移転していることがわかるものが必要になります。

この場合には、例えば次のような書類を用意します。 

 G市で取った住民票 + E市で取った住民票除票 

住民票+除票

住民票には前住所が記載されていますが、通常は一つ前の住所しか載っていません。 

事例の場合も、G市の住民票に前住所として記載されているのはE市の住所のみです。

そこで、E市の住民票除票も併せて添付します。
E市の住民票除票には、前住所としてC市の住所が、転出先としてE市の住所が記載されていますので、住所の履歴をつなげることができます。 

② 本籍地で取った戸籍の附票 

戸籍の附票には、その本籍地に在籍している間の、住所の変更の履歴が記録されています。
本籍地が変わっていないのであれば
戸籍の附票1通履歴がつながる可能性が高いです。 

戸籍の附票

※住所がつながらない場合 

住民票の除票や改製原戸籍・除籍の附票は、保管期間が定められています。 

住民基本台帳法の改正により、令和元年6月20日から、保存期間が従来の5年から150年に変更されました。

また、改正法施行時点で保存期間中のものに関しても、保存期間は150年に延長されます。 

(基本的な取り扱い) 

・平成26年3月31日より前に、消除または改製されたもの
→保管期間は5年 

・令和元年6月20日以後に作成されたもの
→保管期間は150年 

ただし、保管期間を過ぎた後のことは規定されていないため、期間経過後の取り扱いは、各自治体により異なります。

間経過後にすぐに廃棄する自治体もあれば、期間経過後も保管している自治体もあります。 

住所が変わってから長期間が経過している場合、自治体の保管期間の経過により、住民票除票などが取得できず、変更の履歴がつながらないことがあります。

この場合には、次の書類を添付します。 

  1. 住民票・住民票の除票・戸籍の附票など、現在取得できる限りの資料 
  2. 登記済権利証(原本およびコピー)

以前は、上記に加え、不在籍証明書や不在住証明書、上申書などの提出を求められることもあったようですが、最近では、①と②があれば足りるという法務局が多いように思われます。

ただし、統一的な見解は出されていませんので、事前に法務局に確認をしたほうが無難です。 

また、権利証がない、海外に転居した、などの特殊な事情がある場合にも、法務局への相談が必要です。

この場合には、課税明細書や上申書などの提出を求められることがあります。 

誰かに委任する場合には委任状

親戚や知人に代わりに申請をしてもらいたい場合には、その人への委任状も添付します。

司法書士へ依頼する場合には、司法書士が用意した委任状に押印します。

委任状に押す印鑑は、認印で問題ありません。 

法務局へ登記申請

添付書類と申請書の準備ができたら、登記を申請します。 

登記を申請する方法としては、次の3つがあります。 

①法務局の窓口に行って提出する 

法務局の開庁時間は、平日の8時30分から17時15分までです。 

②書類を法務局に郵送する 

郵送の場合、書類が法務局に到着した日が登記申請日になります。 

③インターネットで申請する 

インターネットで申請するには、電子署名をして電子証明書を添付しなければなりません。 

専用ソフトのダウンロードや、電子証明書を読み込むためのカードリーダーも必要です。 

他の2つの方法と比べると、手間がかかってしまうかもしれません。 

登記完了後の書類の受け取り

住所変更登記が完了しても、新しい登記識別情報(いわゆる権利証)は発行されず、登記完了証という書類のみが交付されます。

登記完了証は、登記が終わったというお知らせのようなものです。 

登記完了証は、法務局で交付してもらうほか、郵送してもらうこともできます。

また、添付書面の返却を希望した場合には、登記完了証と一緒に受け取ることができます。

この記事の筆者

司法書士 樋口 亨(@toruhiguchi

東京司法書士会所属 登録番号7208号
司法書士法人リーガル・ソリューション 代表司法書士
行政書士事務所リーガル・ソリューション 代表行政書士
前職の不動産仲介営業マン時代に司法書士試験合格。
都内の司法書士法人に転職し経験を積んだ後、司法書士法人リーガル・ソリューションを設立、同社代表社員就任。
開業以来、不動産登記手続き、不動産に関する訴訟手続き(賃貸トラブル、共有物分割請求、時効取得等)に特化。
保有資格は、司法書士、行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、競売不動産取扱主任者。

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