不動産購入時の所有権移転登記って何?具体的な費用と報酬の相場について解説

登記費用

更新日:2021-07-19
条件に合致する不動産が見つかった場合には、買付申込書を提出し、売主が承諾をしたら、不動産の売買契約を交わし、手付金を支払います。

売買契約締結後に、不動産仲介業者から『残金決済日に所有権移転登記が必要』である旨伝えられます。

場合によっては説明なしに、司法書士事務所の見積もりが出てきたところではないでしょうか?

所有権移転登記って何?そもそも必要なの?
所有権移転登記の具体的な費用や報酬の相場っていくら位なの?

本稿ではこのような疑問を、現役司法書士が具体的に解説します。

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不動産購入時の所有権移転登記とは

疑問の思う女性

 

不動産の売買契約を終え、無事不動産の引き渡し日(決済日)を迎えると、その日に売買代金の残額を支払います。

売買代金の残代金を支払うことによって、一般的に所有権という目に見えない権利が、売主から買主へ移転します。

所有権は目に見えない権利ですので、売買代金を支払った買主が、自分が所有者だということ(所有権を有していること)を、当事者以外の第三者(他人)に主張するには登記名義を備える必要があります。

この登記名義を備えるために、残代金決済日に登記名義を売主から買主名義に変更する登記手続きのことを『所有権移転登記』といいます。

所有権移転登記は、登記申請書に必要事項を記載の上、必要書類と共に管轄法務局へ申請することによって行います。

このように法務局へ申請することを『登記申請』といいます。

登記名義を備えないと先述した不利益を被る可能性があるため、不動産の売買をする場合には実務上99%、売買代金を支払ったその日中に登記申請を行います。

不動産購入時の所有権移転登記にかかる費用

コーヒーと電卓

不動産購入時の所有権移転登記にかかる費用は、大きく分けて以下の2つです。

①自分で手続きをしてもかかる実費代
②司法書士の報酬

上記二つの費用を合算した金額を一般的に『登記費用』といいます。

通常は司法書士事務所の見積もり金額総額のことを指します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

①実費代

登記費用のうち、大部分を占めるのが実費代です。

これは司法書士に依頼せず、買主自身で手続きした場合でも、必ずかかる費用になります。

実費代は、大きく分けて以下の5つです。

①登録免許税
②登記情報の事前閲覧費用
③登記完了後の登記簿謄本取得費用
④住宅用家屋証明書取得費用
⑤郵送通信費・交通費 

以下、それぞれの費用について細かく見ていきます。

登録免許税

登録免許税とは、登記申請をする際に国に納める税金のことで、法務局で納付します。

司法書士が依頼者の代理人となって申請する場合には、登録免許税を依頼者から預かり、代わりに納付します(登記費用に含まれています)

不動産購入時の所有権移転登記の登録免許税は、固定資産税評価額に下記税率を乗じて計算します。 

共有持分が売買対象となっている場合(前面道路の私道持分や区分建物の場合であって規約設定されていない共用部分等)には、固定資産評価額に売買対象の共有持分を乗じた後に下記税率を乗じて算出します。

【税率】
・土地 1.5%
(令和5年3月31日までの特例措置)
・建物 原則2.0% 下記要件を満たせば0.3%

※居住用の軽減措置について
マイホームを取得する際、一定の要件を満たす場合には、登録免許税の軽減を受けることができます。
主な要件は、次の4つです。
①マイホームついての所有権移転登記であること
登記簿上の建物の種類が、「居宅」となっていることが必要です。
住むための建物であっても、登記簿上の表示が「共同住宅」「事務所」などとなっている場合には、要件を満たしません。
②建物の床面積50㎡以上であること
登記簿上で50㎡以上あることが必要です。
③築年数20年または25年以内であること
非耐火建物の場合には築20年以内、耐火建物の場合には築25年以内であることが必要です。
登記簿上の建物の構造が、「木造」「軽量鉄骨造」であれば非耐火建物に、「鉄筋コンクリート造」「鉄骨造」であれば耐火建物に該当します。ただし、上記の築年数を超えていても、耐震基準適合証明書など、一定の性能を備えた建物であることの証明書を取得できる場合には、軽減措置の適用対象となります。
④所有権移転登記が、新築または取得後1年以内になされること

では、計算例を見てみましょう。

【一戸建ての場合】
固定資産評価額が1,000万円の土地と、固定資産評価額が500万円の建物を購入する場合で計算します。
【居住用の軽減措置の要件を満たさない場合】
・土地  1,000万円 × 1.5% = 15万円
・建物     500万円 × 2.0% = 10万円
                 合計25万円
【居住用の軽減措置の要件を満たす場合】

・土地  1,000万円 × 1.5% = 15万円
・建物   500万円 × 0.3% =   1万5,000円
                 合計16万5,000円

【マンションの場合】
固定資産評価額が10億円の土地(敷地権の種類所有権、敷地権割合100分の1)と、固定資産評価額が500万円の区分建物を購入する場合で計算します。
【居住用の軽減措置の要件を満たさない場合】
・土地  10億円 × 100分の1(敷地権割合) ×  1.5% = 15万円
・建物                                        500万円  ×  2.0% = 10万円
                                               合計25万円
【居住用の軽減措置の要件を満たす場合
・土地  10億円 × 100分の1(敷地権割合) ×  1.5% = 15万円
・建物                                        500万円    ×  0.3% =   1万5,000円
                                               合計16万5,000円 

登記情報閲覧費用

不動産仲介業者から不動産決済の手続き(所有権移転登記等)の依頼があった場合には、事前に登記簿謄本(もしくは登記情報)や売買契約書、固定資産評価証明書等を資料としてもらいます。

依頼時にいただいた登記簿謄本の内容と、依頼時点での登記情報に変化がないかを確認するため、最初に各不動産の登記情報を閲覧します。

その後決済日(引き渡し日)当日に、2回目の登記情報を各不動産ごと閲覧します。

2回目の登記情報を閲覧する理由としては、差押えが入っていたり、依頼時に把握していない担保権が設定されていたりしないか、依頼時と土地の地積が変わっていないか、当初決済日に登記申請を予定していた登記(住所変更登記等)が申請されていないか等を確認をするためです。

登記情報の閲覧は、一物件につき334円(法務局の窓口で確認する場合は600円)かかります。

登記完了後登記簿謄本取得代

登記手続きが完了すると、買主に納品するための登記簿謄本を取得します。 

登記完了後の登記簿謄本は、各物件につき1通ずつ取得します。

抵当権設定登記の手続きも行う場合には、抵当権者の分としてさらに各1通ずつ取得します。

完了後謄本の取得費用は、法務局の窓口で取得すると1通600円かかります。

インターネットを利用して請求し、郵送で送ってもらう場合には1通につき500円、インターネットを利用して請求し、法務局の窓口で登記簿謄本を受け取る場合には1通につき480円に値引きされます。

登記簿謄本の取得方法について詳しく知りたい方は『【完全版】不動産の登記簿謄本の取得方法をご覧ください。

※住宅用家屋証明書取得代

登録免許税の軽減措置が受けられる場合には、住宅用家屋証明書を1通取得します。

住宅用家屋証明書を他の申請書類と共に添付して登記申請をすることで、登録免許税の軽減措置が適用されます。

住宅用家屋証明書の取得実費代として、1通につき1300円を購入不動産の市区町村役場に手数料として納めます。

郵送通信費・交通費

司法書士に所有権移転登記手続き等を依頼する場合には、郵送通信費、交通費として下記の通り実費代がかかります。

【郵送通信費具体例】
・不動産仲介業者、銀行関係者との電話やファックス等でのやりとり
・法務局へ添付書面の郵送代
・法務局からの返信用封筒代
・登記完了後の関係者への郵便代

【交通費具体例】
・融資がある場合の抵当権設定書類を金融機関へ預かりに行く
・決済場所へ行く
・住宅用家屋証明書を市区町村役場へ受領に行く
・抵当権抹消書類を受領に行く

司法書士事務所によって異なりますが、報酬とは別に郵送費通信費、交通費の概算実費代を見積もりすることが一般的です。

概算実費代についても、司法書士事務所によって異なりますが、3,000円〜8,000円程度に設定している事務所がほとんどです。

司法書士の報酬(手数料)

司法書士に所有権移転登記手続き等を依頼する場合には、司法書士への報酬が実費代とは別にかかります。

かつては司法書士の報酬基準額が定められていましたが、現在は撤廃され、司法書士が自由に報酬を定められるようになりました。

そのため、司法書士事務所によって司法書士の報酬は大きく異なります。

不動産購入時の報酬相場

日本円

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司法書士へ支払う報酬の内訳としては、大きく分けて以下の5つです。

①登記申請の報酬
②登記情報事前閲覧の報酬
③登記完了後の謄本取得の報酬
④住宅用家屋証明書取得の報酬
日当

※見積もりの内訳に『登記原因証明情報作成費用』を記載している司法書士事務所もなかにはありますが、手続きする場合には委任状等と同様に必ず作成する書類ですので、本稿では触れません。

以下、それぞれの報酬相場を内訳ごとに見ていきます。

所有権移転登記の相場

所有権移転登記の報酬は、1件につき30,000円〜80,000円としている事務所が多いです。
※日本司法書士会連合会が実施している報酬アンケートの結果を参照して記載しております。

売買対象に共有持分がある場合には、所有権移転登記とは別に持分全部移転登記手続きの報酬もかかります。

報酬相場は地域によっても異なり、関東・中部・近畿でやや高い傾向にあります。 

報酬基準は司法書士事務所によって異なりますが、対象不動産の固定資産評価額から報酬を算定している事務所が多いです。

固定資産評価額があがればあがるほど、責任が大きくなるからです。

登記情報事前閲覧の相場

登記情報を閲覧する際の報酬相場は、1,000円~3,000円程度です。

購入する不動産が複数ある場合には(例えば購入する不動産が土地10筆等)、登記情報を取得した通数によって報酬を加算していく司法書士事務所もあります。

登記簿謄本取得代行の相場

登記簿謄本を取得する際の報酬相場につきましても、1,000円~3,000円程度です。

こちらに関しても登記情報事前閲覧の報酬相場と同様に、購入する不動産が複数ある場合には、取得する通数によって報酬を加算する司法書士事務所もあります。

日当の相場

日当の報酬相場は10,000円~30,000円程度です。

日当は、司法書士が決済当日に決済場所で立会いすることへの報酬となります。

※住宅用家屋証明書取得代行の相場

住宅用家屋証明書取得代行の報酬相場としては、3,000円~10,000円程度です。 

こちらは、登録免許税の軽減措置を受けられる場合にのみかかる報酬になります。

※抵当権設定登記の相場

住宅ローンや投資用ローンを利用して不動産を購入する場合には、抵当権設定登記をする必要があります。

抵当権設定登記の報酬相場は30,000円~70,000円程度です。

融資金額によって報酬を決定している司法書士事務所が多いです。

抵当権設定登記について詳しく知りたい方は『抵当権設定登記って何?費用のシュミレーションと流れを解説』をご覧ください。

所有権移転登記の費用を抑えるには

コストカット

所有権移転登記の費用を安く抑える方法としては、以下の2つの方法が考えられます。 

①自分で司法書士を手配する
②所有権移転登記の手続きを自分で行う

以下、それぞれ詳しく見ていきます。

自分で司法書士を手配する

不動産を購入する場合、不動産仲介業者や借入先銀行から登記手続きの依頼先として、提携の司法書士事務所を紹介されることが一般的です。

しかし、自分で司法書士事務所を手配することも、不動産仲介業者や銀行に事前に了承を得れば問題なく可能です。

司法書士の報酬は事務所によって異なります。

そのため、友人や知人に司法書士がいれば直接依頼したり、インターネット等で司法書士事務所を探して直接依頼することで、費用を安く抑えることができるかもしれません。

また不動産取引を数多くこなしている実績のある司法書士事務所に依頼することで、提携の司法書士事務所に依頼するよりかは安心できるでしょう。

自分で手続きする

住宅ローンを利用せずに不動産を購入する場合、不動産仲介業者や売主等全員が了承すれば、自分で登記手続きができる可能性もあります。

自分で登記手続きをすることは法律上問題はありませんし、司法書士に報酬を払う必要もなくなります。

しかし、不慣れな人が登記手続きをする場合、申請がスムーズにできなかったり、誤った登記をしてしまう可能性があります。

また単に所有権移転登記の書類を揃えればいいというわけでもなく、状況によっては住所変更の登記が必要であったり、抵当権等の担保権を抹消する必要もあります。

このようなトラブルを避けるため、不動産仲介業者は基本的に司法書士事務所に依頼することを強く推奨すると思いますが、どうしても司法書士の報酬を節約したい方は、法務局の無料相談等を予約してご自身で登記手続きにチャレンジしてみてください。

自分で登記手続きを出来るか詳しく知りたい方は『マイホーム購入の登記手続きを司法書士に依頼せず自分で出来るか?』をご覧ください。

この記事の筆者

司法書士 樋口 亨(@toruhiguchi

東京司法書士会所属 登録番号7208号
司法書士法人リーガル・ソリューション 代表司法書士。
行政書士事務所リーガル・ソリューション 代表行政書士。
不動産仲介営業マン時代に司法書士試験合格。
都内の司法書士法人に転職し経験を積んだ後、司法書士法人リーガル・ソリューションを設立、同社代表社員就任。
開業以来、不動産登記手続き、不動産に関する訴訟手続き(賃貸トラブル、共有物分割請求、時効取得等)に特化。
保有資格は、司法書士、行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、競売不動産取扱主任者。

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